初心者の題材はビー玉

相馬亮先生のデッサン教室に通うまで、私は鉛筆画とデッサンの違いも知りませんでした。
最初に先生が選んでくれたモチーフはビー玉でした。正確にはビー玉の写真です。
写真のように描き写すのが作品になるのかな?というのが正直なところでした。

描く前の下準備

モチーフをコピーした紙の裏を2Bくらいの鉛筆でひたすら黒く塗ります。
そう、何かの精神療法みたいに・・ひたすら無心で塗ります。
それを画用紙の上に固定し、赤のボールペンでなぞってモチーフの輪郭を取ります。
カーボン用紙を使う要領です。それで下書きの完成です。

モノクロの色の濃さを見分ける

そしてモチーフの写真を見ながら少しずつ丁寧に描き進めていきます。
鉛筆はよく研いだステッドラーの6Bから4Hまで使います。4Hくらいの硬さだと
よく削ったら凶器になりそうな尖り具合です。


先生から「色んな濃さの鉛筆を使ってください」と度々声がかかります。
初心者なもので、2Bだって薄く塗れば薄い色だよね、とか思っていました。

「いくら濃く塗っても2Hは2Hの黒さ、2Bは2Bの黒さにしかなりませんよ」と先生。
頭では理解できても、実際どの鉛筆を使って濃淡を出していくかはなかなか難しいところです。

鉛筆
ステッドラーはのちのち10B まで使用
鉛筆色見本
デッサンの初めに作った鉛筆色見本

時々作品を離して見たり、目を細めて見たりして描き進めてやっと完成。
ビー玉を透過する光と影、描いてみると面白くなってきました。

初めて描いたビー玉の鉛筆画
初めて描いた鉛筆画のモチーフはビー玉でした。

2作目は暗闇に浮かぶチューリップ

2作目は先生が用意したいくつかのモチーフから選びました。
写真として十分美しいのですが、花びらから今にもこぼれそうな水滴を描いてみたかったのです。

描き始めると、しんとした教室に鉛筆の走るシャカシャカした音が響きます。
「皆さん、少しずつ描くんですよ!丁寧に!デッサンじゃないんだから」と苦笑する先生。

先生が描いている手元を見ると、ミリ単位で鉛筆を動かして描いています。全くムラがありません。
モノトーンで美しいグラデーションが生まれています。神業です。これは本当に根気の要る作業です。

水滴と花びらの柔らかさ

水滴は影を付け、光部分は消しゴムや練り消しで白く抜いて立体感を出します。
描き進めて、柔らかな花びらと水滴がなかなかリアルに見えてきました。

若い時は漫画ばかり描いていたから細かいのは得意かも?( ̄ー ̄)ニヤリ
少女漫画の大きな瞳にホワイトで星を入れて光らせる、あれですよ。(←いや、違うでしょう)

背景の黒はガシガシ2度塗り

いよいよ背景を漆黒に塗りつぶします。ここは濃い6Bでひたすら一方向に鉛筆を走らせます。
これが意外に難しい作業で、光の当たり具合ではムラがあって均一な黒に見えないのです。

先生は「もう一度塗り重ねましょう、結構力を入れてこう・・」と、鉛筆をほぼ直角に紙にあててガシガシ塗ってみせてくれました。はい、わかりました!・・って、そのガシガシに約2時間かかりました。

肩も背中も痛くなり・・(-_-;) 芸術は力仕事?
筋肉痛になりました、とこぼすと「そうなんですよ!黒を塗るのはたいへんなんですよ。
それをわかってくれるだけでも嬉しいですね。」と先生は呵々大笑でした。

暗闇に浮かぶ花
暗闇に浮かぶチューリップの花。水滴を描くのは楽しく、背景の黒はてごわい・・。

3作目は暗闇から見返す猫

3作目は自分でモチーフを探しました。

先生のように女性をリアルに描きたかったのですが、気に入った写真が見つからず、猫を選びました。
そもそも瞳をリアルに描いてみたかったのです。この猫はカメラに向かって鋭い視線を投げかけています。
飼い猫でも一瞬警戒心のある野生を見せる時がありますよね。その緊張感が良かったのです。

初めて鉄筆を使ってみた

でもふさふさの毛並みを上手く描けるか、ちょっと不安がありました。
そこで先生から鉄筆を使う方法もあると聞き、早速Amazonで購入しました。バンコの鉄筆です。
早速 紙に試し描きをしてみました。濃い色の鉛筆を使うとよく線が見えるようです。

バンコの鉄筆 主に使ったのは0.8ミリ
猫の毛並み、ひげの試し描き

鉄筆で紙に線を引くと跡が残り、鉛筆で塗った時に白く線が残る仕組みです。
他の方々が制作に入る中、ひたすら鉄筆でカリカリと毛並みを描いていきました。下書きに倍の時間がかかりました。

水貼りした画用紙に描き始めた猫の鉛筆画
板に水貼りした紙に描き始めた頃
セーターと猫をだいぶ描き進めたところ
セーターと猫をだいぶ描き進めたところ

セーターの編み目に苦心

思わぬところで苦戦したのが、人物の着ているセーターです。
描いても描いても終わらない感じで。飽きたら猫の毛を描いて、と羊毛と猫毛を行ったり来たり。

一通り描き終えて、背景を黒く塗りました。今回は黒さが違うカーボンの鉛筆を使いました。
すると、どうも人物が浮いてみえて今ひとつです。
もっと人物が暗く見えるはず、とセーターに一旦黒を重ねたら編み目がつぶれてしまいました。
うーん、これもまた違う、と極細の消しゴムで編み目を白く抜いていきました。果てしない・・。

そうこうして、ついに完成に至りました。

完成した猫の鉛筆画。このあと額装しました。
やっと完成!猫の目がキラーンとしているところを描きかった鉛筆画。このあと額装しました。

ご近所で親しくしているKさんは、あらゆる知り合いに連絡して、教室の鉛筆画作品展を見るように宣伝してくれました。「すごいのよ、セーターの編み目一つ一つが!もう写真みたいだから」って。

ありがとうございます。苦労した甲斐があります。でも主役は猫なんですけど、猫・・・笑

さてこの秋からは女性像を描くつもりです。その時はまたブログでご紹介したいと思います。